脱突、裏、外せ突け、上胴は、基本の稽古では全て同じことを表している。
- 脱突:通常は練習名として使われる(例:脱突三本)。
- 裏:通常はターゲットへの道筋を表す言葉である。掛かり手ではなく、元立ちの状況によって表なのか裏なのかが決まる。
- 外せ突け:文法的には命令になるが、稽古中では掛かり手に突きをさせるときに発する号令。
- 上胴:打突部位の名前(表も裏も上胴をターゲットとしている)。大抵は試合で打突部位を告げるときに使われる。
三つの主な突きである、直突、下突、脱突を行うとき、全てにおいて同じ動作をすると気づくまで、長い時間を要した。三つのどの突きにおいても、掛かり手は相手の木銃を迂回することなくあくまで真っ直ぐ突くが、元立ちの対応で技の名前が変わる。
脱突の場合、元立ちは自分の前の手の上(故に「上胴」なのだ)と木銃および体の間に隙を作らなければならない。(元立ちの木銃の「裏」側となる)。
突き自体は、掛かり手にとっては表の突きとほぼ同一に見える(相手の木銃の正面で)。木銃は真っ直ぐの線を逸れてはいけない。突く場所は直突および下突と同じである。
元立ちは、掛かり手が真っ直ぐ突けるラインから逸れないところに隙を作らなければならない。これは、元立ちが床に平行に立って相手の木銃を押しながら、木銃の先をやや上方に動かすことによって作る。この上方への動きを、相手の突くラインが真っ直ぐに確保されるように起こしながら、「外せ突け」と号令をかける。号令の「突け」の部分を強調しつつ、その瞬間に木銃を上方に動かし隙を作る。「同じ」という号令で続く突きを繰り出す。
元立ちは正しい間合いを保つことに留意する。掛かり手が距離を埋め合わせようとするあまり、よくない突きを行うことがないようにする。元立ちが遠すぎる場合、掛かり手は相手に届かない場所であろうとも、正しい突きを行うべきである。相手の位置を見て、互いに正しい間合いを学ぶのだ。木銃で距離を測るのではない。
元立ちは、隙を作ったとき、正しいタイミングで号令をかけなければならない。これにより、掛かり手は隙が作られたことを知る。
元立ちが隙を作ったとき、掛かり手は木銃を柔軟に握ることを心がける。掛かり手は、剣先を横に押されたときに抵抗しない。ここで押し返すと、腕を緊張させ、突きをぱっとしないものにさせるし、緊張が緩んだ瞬間に掛かり手の木銃を揺らす原因にもなるだろう。元立ちは上方への小さな動きを起こしながら号令をかけ、掛かり手は木銃を前方に押して真っ直ぐの線を取る。木銃は相手の木銃の下から手の上を通って、真っ直ぐに心臓に到達する線である。掛かり手の木銃が相手の木銃の下をくぐるときは、小さくくぐらせる。このとき木銃が触れ合っても良い。
元立ちは突きを受け止め、吸収するために一歩小さく後退する。もし元立ちが掛かり手の突きが到達する前に下がってしまうと、相手は正しい距離を学ぶことができない。掛かり手は1インチぐらい肩の中に埋まるところを狙ってくるため、下がるのも1インチ程度にしなければならない。突いた瞬間から、掛かり手の木銃は元立ちの肩とコンタクトを失ってはならない。突きを受ける間、元立ちはバランスと半身を保つ。私(サイモン)のやり方は、重心をやや前足にかけ、突かれた時に体重心を元に戻すようにしている。私はこれを「一歩」とは考えていない。
基本練習:脱突三本
突きが終わったあと、元立ちがバランスを保ったまま静止している間、掛かり手は木銃を引き、構えに戻る。この動作は強く確実に行い、真っ直ぐに構えの位置に戻らなければならない。木銃の先を上下させないようにする。この一連の動作に関する力の割合については、突きの力が40%だとしたら、60%の力で木銃を引くと言われている。
掛かり手が構えに戻った直後、元立ちは小さく二歩(同じ歩幅)後退し、正しい間合いを取って次の突きに備える。後退するとき(後退後ではなく後退の最中)元立ちの木銃は掛かり手の木銃(静止している)の下を通るため、二歩下がった直後には既に次の突きへの態勢が整っている。掛かり手はこの間、足を動かさない。
基本稽古の正しい教えには欠かせないものだが、間合いは元立ちによって決められる。例えば、「元立ちの腰骨が動きすぎ」て、右手が間違ったポジションにあった場合、正しい間合いが取れず、掛かり手は正しい姿勢で突くことが困難となる(2分40秒参照)。このような場合、二本めに備えて元立ちが間合いを正す。もし自分が元立ちを務めていて、間合いを間違えたとしても、ちょこちょこ動き回らず、ただ次の回で正しい間合いを取ればいいのである。
少し進んだ練習:遠間合いからの裏
遠間合いから、掛かり手は一歩前進し、表を攻める。元立ちはそれに反応し、基本的に上記に述べたやり方で、だがそれよりやや早く裏の隙を作る。木銃は、この一連の動きの間、触れ合っていなくてもよい。
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