コメント:サイモン・ラースン
初段が六段と対戦する試合は、非常に興味深いものになった。一般的に、初段であれば若くスピードがあり、六段は機を見るのに巧みである。
菊池は小手へのフェイントで相手の出方を見た。何人かこのやり方をしているのをみて、私は自分でも取り入れている。私にとっては、一本を取られる大きなリスクを侵さない程度に距離をとりながら、相手の反応(例えば、相手が避けるのか、防御するのか、それとも攻撃してくるのか)を見るのに役立っている。守りに入っている相手に対して小手のフェイントをかけ、下から攻撃することは、素晴らしいテクニックといえる。もちろんその時も、フットワークを使い半身を崩さずに横に動かなければならない。
佐藤は、敵がかかってくるときに自分の攻撃をかけるタイプである。菊池は佐藤がはっきり突いて来るまで近寄らせないようにしていた。映像をスローで見ると、動きは佐藤のほうが速いが、一本となるには一つ問題があったあったように思う。彼の突きは胴に対して完全には真っ直ぐに入っていなかった。むしろ喉を狙っていたように見えたが、結果として胴の上部を突いていた。一方、菊池は完全に真っ直ぐ胴を突いており一本を取った。
久恒先生は距離を説明するとき、しばしば短剣を喉と胴に向けて持つ(半身になっている人に対しては特に)。私個人は喉への突きが好きだが、喉はより距離があり、相手は抜き技で易々と避けるか、先に胴を突いてくる可能性がある。
佐藤は明らかにこれに驚いたようで、第一攻撃は「はじめ」と同時に両者は同じスピードで始めたが、今回菊池はセンターを取るために一歩先んじて進み、鍔迫り合いの中で攻撃的に攻めた。彼の体重は前に出、佐藤を圧倒した。両者が一旦離れた時、菊池は腕を伸ばし、歩幅は大きく、重心は前足に乗っていた。
私は、腕をまっすぐに伸ばすことは守りの姿勢だと教えられた。前足に重心があるということは、素早く動けないということである。短剣道は速すぎて近間でそれができない。菊池は面へのフェイントをかけて優位に立ち、円を描くようにして下側から突いた。
クールな試合だった。
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