はじめに:ここに記す形の説明は、AJJFのビデオと『剣道ワールド』の記事を元にライター自身が独自に解釈を加えたものである。専門用語の使い方が正確でない場合もあると思うが、わかりやすさに重点を置いているためである。間違いがあった場合はライターの責任であり、銃剣道ワールドはそれに関与していない。
私は『銃剣道ワールド』のビデオ編集者そしてコーディネーターとして多くの時間を費やしてきたが、ブログを寄稿するのは初めてである。これまで銃剣道は単独で稽古してきたが、最近メルボルンでグループでの稽古が開始されたのを機に、これから始める人たちに役立つようなコンテンツを作るべきだと思い立った。
これは木銃対木銃の形の大まかな手引きである。いくつかの映像での演武を見ながら、そこで何が行われているかを解説して行く。『剣道ワールド』のバティストの形の記事を元に、それをわかりやすく噛み砕いて掲載しようと思う。様々なテクニックの知識において、所々推測しながら書いており、説明における間違いがあるかもしれない。それらは逐次修正してアップデートしていくつもりだ。
解説の方法として、各形は二つのパートに分けられる。まず詳細を記した長いバージョン。そして「長過ぎて読まなかった」(TLDR)バージョンは、キーポイントだけを記載した。詳細バージョンは2段落から成り、最初の段落は形の重要なテクニックについて書いている。第二段落は全ての形においてほぼ同じである。
バティストの記事(2009年『剣道ワールド』vol.5-1 97-105ページ)にはとても助けられた。記事によれば、形は、考え方として2つのセットに分けることができる。最初の四本は仕方が表、裏、下、喉を突き、後半四本は打方が前半の仕方と同じ突きをするのだが、最終的には仕方が反撃する。つまり、最初の四本での仕方のやり方を理解すれば、後半四本での打方の役割がわかるのだ。
1 一本目:表
両者中段の構え。3歩前進して間合いに入り、仕方は打方の起りに乗じ表を突く。打方は木銃の先をやや左に動かし隙を作る。
仕方は1歩大きく後退しながら木銃を強く引き抜いて、小さく前進(残心)。打方は仕方を導きながら中段の構えに戻る。両者同時に下段の構え。5歩後退し中段に戻る。
TLDRバージョン:両者中段。3歩前進。打方=送り。仕方=表。仕方=後退。仕方=残心。中段。下段。5歩後退。中段。
2 二本目:裏
両者中段の構え。3歩前進して間合いに入る。打方は最後の一歩を少し短縮して間合いの外に止まる。仕方はわずかに前進しつつ打方にプレッシャーをかける。打方はこれに応じ右に押し、仕方に裏を突かせる。
仕方は1歩大きく後退しながら木銃を強く引き抜いて、小さく前進(残心)。打方は仕方を導きながら中段の構えに戻る。両者同時に下段の構え。5歩後退し中段に戻る。
TLDRバージョン:両者中段。仕方3歩前進、打方短く。打方=前進しプレッシャー。打方=右に押す。仕方=裏。仕方=後退。仕方=残心。中段。下段。5歩後退。中段。
3 三本目:下
打方下段の構えで剣先が仕方の右膝を指向。仕方はやや低めの中段の構え。3歩前進し、打方は最後の一歩を少し短縮して間合いの外に止まる。仕方はわずかに前進しつつ表タイプのフェイントをかけつつ攻める。打方はこれに応じ攻めを上方にそらす。仕方は打方の木銃の下側から下胴を突く。
仕方は1歩大きく後退しながら木銃を強く引き抜いて、小さく前進(残心)。打方は仕方を導きながら中段の構えに戻る。両者同時に下段の構え。5歩後退し中段に戻る。
TLDRバージョン:打方、仕方の右膝を指向しての中段。仕方低め中段。仕方3歩前進、打方短く。仕方=前進し表フェイント。打方=右上方に押す。前進しプレッシャー。打方=右に押す。仕方=裏。仕方=後退。仕方=残心。中段。下段。5歩後退。中段。
4 四本目:喉
打方やや低めの中段の構え。仕方は下段の構えで剣先が仕方の左膝を指向。3歩前進し、打方は最後の一歩を少し短縮して間合いの外に止まる。仕方はわずかに前進しフェイントをかけつつ下胴を攻める。打方はこれに応じ仕方の木銃を押し下げる。仕方は打方の木銃を避け喉を突く。
仕方は1歩大きく後退しながら木銃を強く引き抜いて、小さく前進(残心)。打方は仕方を導きながら中段の構えに戻る。両者同時に下段の構え。5歩後退し中段に戻る。
TLDRバージョン:打方低め中段。仕方は打方の右膝を指向しての下段。3歩前進、打方短く。仕方=前進し下フェイント。打方=下方に押す。仕方=下から喉。仕方=後退。仕方=残心。中段。下段。5歩後退。中段。
5 五本目:右の払い突き
両者中段の構え。3歩前進して間合いに入り、打方は表を突く。仕方はこれに応じ小手元で右に払い、構えに戻り、前進せずに表を突く。
仕方は1歩大きく後退しながら木銃を強く引き抜いて、小さく前進(残心)。打方は仕方を導きながら中段の構えに戻る。両者同時に下段の構え。5歩後退し中段に戻る。
TLDRバージョン:両者中段。3歩前進。打方=表。仕方=右の払い。仕方=構えに戻りその場で表。仕方=後退。仕方=残心。中段。下段。5歩後退。中段。
6 六本目:左の払い突き
両者中段の構え。3歩前進して間合いに入り、仕方は最後の一歩を少し短縮して間合いの外に止まる。打方はわずかに前進しつつ仕方の右にプレッシャーをかける。仕方はこれに応じ右に押す。打方は攻めをそらし下から裏への突きを行う。仕方は打方の左小手元で左に払い、構えに戻り、前進せずに裏を突く。
仕方は1歩大きく後退しながら木銃を強く引き抜いて、小さく前進(残心)。打方は仕方を導きながら中段の構えに戻る。両者同時に下段の構え。5歩後退し中段に戻る。
TLDRバージョン:両者中段。3歩前進、仕方短く。打方=前進し表のフェイント。仕方=右の払い。打方=下から裏。仕方=左の払い、構えに戻り、その場で裏。仕方=後退。仕方=残心。中段。下段。5歩後退。中段。
7 七本目:下の払い突き
仕方下段の構えで剣先が打方の右膝を指向。打方はやや低めの中段の構え。3歩前進し、仕方は最後の一歩を少し短縮して間合いの外に止まる。打方はわずかに前進しつつ表タイプのフェイントをかけつつ攻める。仕方はこれに応じ攻めを上方にそらす。打方は仕方の木銃の下側から下胴を突こうとする。仕方はこれに応じ打方の前の小手元で下の払いをし、右下方に押さえる。仕方は鋭く構えに戻り、前進せずに表を突く。
仕方は1歩大きく後退しながら木銃を強く引き抜いて、小さく前進(残心)。打方は仕方を導きながら中段の構えに戻る。両者同時に下段の構え。5歩後退し中段に戻る。
TLDRバージョン:仕方、打方の右膝を指向しての中段。打方低め中段。3歩前進、仕方短く。打方=前進し表フェイント。仕方=上方に押す。打方=下側から下。仕方=下の払い、構えに戻り、その場で表。仕方=残心。中段。下段。5歩後退。中段。
8 八本目:巻き落とし
打方は下段の構えで剣先が仕方の左膝を指向。仕方やや低めの中段の構え。3歩前進し、仕方は最後の一歩を少し短縮して間合いの外に止まる。打方はわずかに前進しフェイントをかけつつ下胴を攻める。仕方はこれに応じ打方の木銃を押し下げる。打方は仕方の木銃を避け喉を突く。仕方はこれに応じ左腕を伸ばし、交代しながら打方の木銃を押し上げる。仕方は木銃の剣先をセンターに置きながら、後ろ手を鋭く腰まで下ろして巻き落とす。打方は最後の突きに備えて心臓部分に隙をつくっておく。仕方は前進し表を突く。
仕方は1歩大きく後退しながら木銃を強く引き抜いて、小さく前進(残心)。打方は仕方を導きながら中段の構えに戻る。両者同時に下段の構え。5歩後退し中段に戻る。
TLDRバージョン:打方は仕方の左膝を指向しての下段。仕方低め中段。3歩前進、仕方短く。打方=前進し下フェイント。仕方=下方に押す。打方=下から喉。仕方=上で受け、巻き落とし、構えに戻り、その場で表。仕方=後退。仕方=残心。中段。下段。5歩後退。中段。
※現在進行中の入門ガイドは、『銃剣道ワールド』のビデオ編集者であるエミリー・ジャックマンによるものである。彼女は「銃剣道メルボルン・グループ」と「ヴィクトリアンなぎなた連盟」を主宰しており、オーストラリアなぎなた連盟の副会長でもある。新しいなぎなたと銃剣道に加え、キーリー先生の元で戸田派武甲流も学んでいる。
このガイドは、銃剣道メルボルンのフェイスブックにも掲載されている。
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