エミリーの形入門:短剣対短剣

はじめに:ここに記す形の説明は、AJJFのビデオと『剣道ワールド』の記事を元にライター自身が独自に解釈を加えたものである。専門用語の使い方が正確でない場合もあると思うが、わかりやすさに重点を置いているためである。間違いがあった場合はライターの責任であり、銃剣道ワールドはそれに関与していない。

 

役立つ用語

間合い:二人の間の距離

入り身:間合いを詰め、相手の懐に入ること

払い:相手の武器の進路をそらすこと

擦り上げ:相手の攻撃を受け、その武器の進路を逸らす

 

バティストの記事(2011年『剣道ワールド』vol.5-4 92-99頁)によれば、形は、考え方として2つのセットに分けることができる。最初の五本は基本技、六本目から八本目は入身技使われている。入身技は相手が武器をコントロールするのを妨げながら敵の胴を突く。剣道ワールドのホームページにはこの記事が写真付き(短剣対短剣と構え)で掲載されているので、ぜひ参考にしてほしい。また全日本銃剣道連盟のホームページでは三本目を除く全ての形のビデオが見られる。三本目は当時は正式な形ではなかったので、ビデオがない。現在の三本目は後から加えられ、現在は全部で八本になっている。

 

短剣道の四つの基本の構えは以下の通りである。

 

中段の構え:標準の構えで、形の始めは中段から行う。右足前、腰と肩はほぼ相手に向かうが、体の左側は少し後ろに引く。左手は左腰の脇に置いて肘は内側に引く。右手は体の前に伸ばし腕はウエストの高さにし、短剣の剣先の延長線上に相手の目があるようにする。

 

入身中段の構え:中段の構えから、上半身を前傾させ、右手でやや相手を抑える。

 

下段の構え:中段の構えから右手首を下方に動かし剣先の延長線が相手の膝に向かう。

 

上段の構え:中段の構えから、右腕は肘を曲げて頭の上に、短剣が自分の頭の中心に来るようにする。

 

解説の方法として、各形は二つのパートに分けられる。まず詳細を記した長いバージョン。そして「長過ぎて読まなかった」(TLDR)バージョンは、キーポイントだけを記載した。詳細バージョンは2段落から成り、最初の段落は形の重要なテクニックについて書いている。第二段落は全ての形においてほぼ同じである。

 

短剣対短剣の各形は互いに8歩離れて始める。

 

一本目:喉の突き

互いに中段の構え。3歩進んで間合いに入り、打方は入身しようとする(短剣実際には右外側に)。打方は仕方の起こりに乗じ機を失せず喉を突く。仕方は大きく後退しながら短剣を引き抜き残心を示す。切先が打方の手首に向くようにする。

 

両者中段の構え。両者同時に下段の構え。後ろ足から5歩後退し中段に戻る。

TLDRバージョン:両者中段。3歩前進。打方右に隙。打方=喉。仕方=後退。仕方=残心。中段。下段。5歩後退。中段。

 

二本目:面の打ち

打方は下段、仕方は中段入身の構え。3歩前進して間合いに入り、仕方は上段から打方の面を打つ。仕方は短剣を打方の目の前を通るように下げる。切先が顎に届いたとき、打方は後退するが、そのときに仕方は小さく前進し残心を示す。仕方は切先を喉に付ける。

 

両者中段の構え。両者同時に下段の構え。後ろ足から5歩後退し中段に戻る。

TLDRバージョン:打方下段、仕方中段入身。3歩前進。仕方=面。仕方=喉まで下げ、入身。打方=後退。中段。下段。5歩後退。中段。

 

三本目: 小手の打ち

打方は下段の構え、仕方は中段入身の構え。3歩前進して間合いに入るが、打方は最後の一歩を短くし、間合いの外にとどまる。仕方は打方の喉を攻める姿勢。打方は喉突きを警戒した結果、短剣を右から左へ小さく動かして払うとき、小手に隙ができる。仕方は前進し小手を打つ。仕方は小さく前進し残心を示し、打方が後退するときに打方の喉に短剣の剣先を付ける。仕方は相手を警戒しながら短剣を打方の喉に向けておく。

 

両者中段の構え。両者同時に下段の構え。後ろ足から5歩後退し中段に戻る。

TLDRバージョン:打方下段、仕方中段入身。3歩前進、打方は3歩目小さく。仕方=フェイントの喉 打方=左に払い。仕方=小手。仕方=前進して喉。打方=警戒しつつ引く。中段。下段。5歩後退。中段。

 

四本目:喉の払い突き

互いに中段の構え。3歩前進して間合いに入り、打方は仕方の喉を突く。仕方は右に体を開きながら打方の剣を左下方に打ち払い、その場で喉を突き、大きく1歩後退しながら引き抜く。仕方は小さく前進し残心を示し、切先を打方の手首に向ける。

 

両者中段の構え。両者同時に下段の構え。後ろ足から5歩後退し中段に戻る。

TLDRバージョン:両者中段。3歩前進。打方=喉。仕方=右に開き、左払い、喉。仕方=引き抜き。仕方=残心。中段。下段。5歩後退。中段。

 

五本目:面を払い面打ち

打方は上段、仕方は中段入身の構えで刃を打方の右手首に向ける。3歩前進して間合いに入り、打方は面を打つ。仕方は下方から打方の剣を上方に大きく擦り上げ面を打つ。仕方は短剣を打方の目の前を通るように下げる。切先が顎に届いたとき、打方は後退するが、そのときに仕方は小さく後退し残心を示し、上段の構えに戻る。

 

両者中段の構え。両者同時に下段の構え。後ろ足から5歩後退し中段に戻る。

TLDRバージョン:打方上段、仕方入身で打方の右手首に向ける。3歩前進。打方=面。仕方=擦り上げ、面。仕方=喉まで短剣を下げ、後退して残心。中段。下段。5歩後退。中段。

 

六本目:入身制体突き

両者中段の構え。3歩前進して間合いに入り、仕方はさらに間合いを詰め、打方の剣を右方に攻める。打方はこれに応じて後退し、直ちに仕方の胴を突く。仕方は打方の剣を左下方に打ち払い、左足を前方に右足を後方に踏み換えながら体を開き、左手で打方の右肘関節の上部を押さえ制体して胴を突く。仕方は左手をはなし右半身になり残心を示しながら後退する。

 

両者中段の構え。両者同時に下段の構え。後ろ足から5歩後退し中段に戻る。

TLDRバージョン:両者中段。3歩前進。仕方=前進、右に押す。打方=後退。打方=胴。仕方=左払い、右肘を掴む。仕方=胴を突き、後退。仕方=残心。中段。下段。5歩後退。中段。

 

七本目:体を開いて行う制体胴の突き

両者下段の構え。3歩前進して間合いに入る。仕方は剣を左に返して入身しようとする。打方は後退し直ちに進出して仕方の右胴を突く。仕方は打方の剣を右に押さえながら、左足を前に踏み換え体を左に開き、打方の右上腕部を左腕で抱え込み制体して胴を突く。仕方は左手をはなし右半身になり残心を示しながら後退する。

 

両者中段の構え。両者同時に下段の構え。後ろ足から5歩後退し中段に戻る。

TLDRバージョン:両者下段。3歩前進。仕方=前進、左に押す。打方=後退。打方=胴。仕方=右払い、右上腕部を左腕で抱え込み。仕方=胴を突き、後退。仕方=残心。中段。下段。5歩後退。中段。

 

八本目:面うちに対する制体突き

打方は下段、仕方は中段入身の構え。3歩前進して間合いに入り、仕方は機を失せず打方の剣を下方に押さえて入身しようとする。打方は仕方の攻めに応じ後方にさがりながらこれを脱して面を打とうと剣を振りかぶる。仕方は打方の振りかぶりに乗じて入身し、打方の右上腕部を押し上げ制体して胴を突く。仕方は左手をはなし右半身になり残心を示しながら後退する。

 

両者中段の構え。両者同時に下段の構え。後ろ足から5歩後退し中段に戻る。

TLDRバージョン:打方下段、仕方入身。3歩前進。仕方=前進、下方に押す。打方=後退、上段。打方=面。仕方=打方の右上腕部をブロック。仕方=胴。仕方=残心。中段。下段。5歩後退。中段。

 

※現在進行中の入門ガイドは、『銃剣道ワールド』のビデオ編集者であるエミリー・ジャックマンによるものである。彼女は「銃剣道メルボルン・グループ」と「ヴィクトリアンなぎなた連盟」を主宰しており、オーストラリアなぎなた連盟の副会長でもある。新しいなぎなたと銃剣道に加え、キーリー先生の元で戸田派武甲流も学んでいる。

このガイドは、銃剣道メルボルンのフェイスブックにも掲載されている。

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